斜里簡易裁判所 昭和46年(ろ)3号 判決 1971年11月18日
被告人 三浦裕
大一二・四・二七生 農協職員
主文
被告人を罰金三、〇〇〇円に処する。
右罰金を完納できないときは金五〇〇円を一日に換算した期間、同人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は肩書自宅において、昭和四六年四月一日現在において、生後九一日以上になるアイヌ犬一匹を所有し、飼育しているにもかかわらず、法令の定める同年四月三〇日を経過して六月二〇日まで、狂犬病予防法施行規則第三条所定の事項につき斜里町長を経て北海道知事に対し登録の申請をしなかった。
(証拠の標目)(略)
(法令の適用)
被告人の判示行為は、狂犬病予防法第四条第一項、第二七条第一号、同法施行規則(昭和二五年九月二二日厚生省令第五二号)第三条第一項に該当するので、所定刑の範囲内で罰金三、〇〇〇円に処し、その換刑処分につき刑法第一八条を適用する。
なお、被告人は本件登録懈怠の理由として、斜里町管内では従来町当局の指導により、法定期間内に犬の登録をしなくても、当該年の六月頃施行される予防注射のときに併せて登録を行えば処罰を受けることはなかったので、本件登録についてもそのように信じ、その時期に登録と注射を受けたのであって、これを法律違反として処罰するのは不当であると主張する。
そして、被告人ならびに証人横山保雄の当公判廷における各供述によれば、従来斜里町役場としては、管内における犬の登録につき法定期間である四月三〇日までに登録手続をとらない事例が多いため、当該年の六月頃実施される犬の予防注射の際に、便宜これら登録もれの犬についても、更新としてではなく新規登録として犬一頭につき一〇〇円高い金三〇〇円の手数料を徴して登録申請を受理していたことが窺われる。
しかしながら、同証人の供述、証人菅原虎夫、被告人の当公判廷における各供述、広報「しゃり」二三八号、二四五号の各記載を綜合すると、犬の登録、注射などの事務を主管する斜里町民生課では管下の住民に対し、主として同町発行の広報紙「しゃり」に掲載するなどの方法をもって、毎年四月一日現在において法令により登録すべき犬(生後九一日以上)を所有する者は同月三〇日までに所定の登録手続を済ませるよう注意を喚起しており、被告人自身も右期間内に犬の登録をしなければならない旨法定されていることは十分了知していたこと、被告人は昭和四五年度は六月一〇日に登録をしているが、同四〇年以後四三年までは毎年法定の四月中に犬の登録を経由しており、同登録に関する斜里町当局の前記のごとき従来の取扱いは全く便宜的なものであって、これにより法定期間内の登録を怠り、便宜六月の予防注射のときに登録をすませた者が当該登録懈怠につき違法性を阻却し、あるいは可罰性がなくなるごとき性質のものではないと言わざるを得ない。
のみならず、前掲各証拠によれば、被告人は本件登録懈怠につき十分その違法性の認識を有していたものと推認するのが相当である。
よって、右被告人の主張は採用の限りではない。
以上の次第で、主文のとおり判決する。